2023年5月より、一般社団法人神奈川県卓球協会の会長を務めております近藤欽司(こんどう・きんじ)です。
神奈川県卓球協会は本年、設立から100年の節目を迎えました。諸先輩のたゆまぬ努力と卓球を愛する方々の支えにより、1世紀の歴史を刻むことができ、大きな喜びと同時に使命の大きさを改めて感じております。
この間の最大の取組みとしては、2009年横浜アリーナでの第50回世界卓球選手権大会の成功が挙げられます。山口宇宙前会長のもと、神奈川県卓球界が一致団結して運営にあたり、大成功を収めたことは記憶に新しいところであり、大きな感動と自信を得ることができました。
私は、このような伝統ある組織の舵取り役として、役員や支部・専門部の皆様、会員や広範な卓球愛好家、ファンの皆様方のご支援、ご協力を土台に、一丸となって前進したいと考えております。
具体的には、当面の目標として次の2点に取り組んでまいります。
活動目標
1. 強化・普及活動の推進
強化活動では、国民スポーツ大会(国スポ)卓球競技において総合成績3位以内。普及活動では、日本卓球協会登録会員全国一の2万人をそれぞれ目標に
2. 広報活動の充実・強化
デジタルを駆使し卓球協会の活動や情報を提供。大会の申し込みや連絡事項などを簡素化し、親しみやすく参加しやすい環境を整備
設立100周年記念事業の展開を通じてさらに活動の幅を広げ、100年の伝統に新たな努力を重ねまして、卓球界を盛り上げてまいりたいと存じます。どうぞ、よろしくお願い致します。
2024年10月20日 一般財団法人 神奈川県卓球協会 会長 近藤 欽司
神奈川県卓球協会の新会長に、近藤欽司・元日本代表女子監督が就任した。白鵬女子(旧京浜女子商)を高校総体8 回の優勝に導き、ナショナルチームでは福原愛、石川佳純選手らを育て、メディアの卓球解説でも親しまれた近藤氏に「卓球王国 神奈川」の復活など、抱負を聞いた。(2023年6月 聞き手=理事・広報担当 早川正)
恩返し〟の覚悟で受けた
☆:この20年余は日本女子代表チーム、実業団の監督など、国際舞台や中央での活躍が中心でした。地元神奈川の会長を引き受けた経緯は。
近藤:山口会長の勇退表明があり、その後任にふさわしいと思っていた副会長・小林秀行さん(元日産自動車、横浜隼人高監督)が急逝され、話が回ってきました。これまで現場の指導一筋ですが、神奈川に恩返しできれば、と。
☆:卓球人口は、日本卓球協会への選手登録だけで31万人。神奈川は1万6000人と全国最多を誇ります。直面する課題は何でしょう。
近藤:長年、強化畑を歩いてきた者としては、「強い神奈川」と言われなくなったことに寂しさを感じます。かつて日産自動車、武田薬品湘南という実業団の強豪がいて、高校も男子の相模工大付(現湘南工大付)、女子は白鵬女子が全国を席巻したが、今はそうではありません。総合優勝7回を誇った国体も25年前の神奈川大会を最後に途切れたままです。
まずは国体3位を目標に
☆:就任にあたり、「国体総合成績3位以内」「登録人員2万人」の目標を掲げました。
近藤:3年前、「世界にはばたけ卓球神奈川」特別強化プロジェクトがスタートし、亡くなった小林さん、横浜市卓球協会の現会長・河原智さん、私の3人で有望な小中学生の特訓を始めました。小林さんの後は、協会理事長の長谷部攝(ただし)さんが継いでいます。県内トップ級の小中学生を選抜し、週3回の指導を行っています。
☆:現在の日本のトップ選手は、全日本選手権「ホープス、カブ、バンビ」の部など、幼少期から活躍した者で占められています。会長はJOCエリートアカデミーの元監督でもありますが。
近藤:県内に有望な小学生がいないわけではないのですが、外に流出するケースが多い。中高一貫で育てる強豪校が有望選手の受け皿になっていて、公立中心の神奈川はそこが難しいのですが、強いクラブチームはあります。クラブが受け皿になるための支援の枠組みなども必要になってきますが。
☆:日本卓球協会は、中長期のミッションで、〈強化育成〉世界ナンバーワンになる〈普及〉国民的スポーツに育てる……を目標に掲げています。後者の方での神奈川の役割は。
近藤:日本協会への登録人員「2万人」はコロナ禍の前にあと一歩までいったのです。横浜、川崎のような大都市は卓球をやる場所があり、指導者もたくさんいますが、中小都市は不足しています。中体連、高体連と協力し、地方の拠点での講習会を増やしていきたいと思っています。
100周年、神奈川の〝きずな〟さらに
☆:2024年パリ五輪では、神奈川出身の長崎美柚選手(木下グループ)が選考レースを戦っていました。
近藤:外に出ても、出身選手との接点を持ち続ける神奈川でありたいですね。国体になればふるさと選手として神奈川のゼッケンをつける。長崎選手にもいつか神奈川から国体に出てほしいと願っています。
教える側がまず変わろう
☆:自身の回顧録「ピンポン ひまなし70年」(神奈川新聞社)を出版しました。「ダジャレの近藤」と呼ばれるように、ユーモアあふれる印象を受けますが、著書によると、昔はずいぶん怖い監督だったようですね(笑)。
近藤:う~ん、確かに。京浜女子・白鵬では監督4年目、26歳でインターハイ団体初優勝。そこからがイバラの道で、2回目の優勝まで15年かかりました。頑張っても結果が出ない。練習量を増やし、厳しく鍛えてもベスト8止まり。焦りが顔に出て言葉が荒くなる。選手は萎縮する、まさに悪循環でした。そして36歳の時に急性肝炎で入院、療養3か月のどん底を味わいました。自分を見つめ直すよい機会でした。
☆:そういう辛苦を経てのインターハイ50年連続出場、8回優勝、世界選手権18年ぶりの団体メダル。その経験から、指導者や選手に強調したいことは。
近藤:全国大会でまず小中学生を勝たせましょう。そのためには、教える側の技量の向上が欠かせません。カギは基本力プラス「戦術の幅」、つまり技の種類です。「小学生レベルはここまでをみっちり」「余計な技に手を出してはだめ」「カットマンは拾って粘れ」「攻撃を覚えるのはその後だ」。これがもっともいけない指導(笑)。優秀な先生ほど成功体験、昔の練習にとらわれがちですが、卓球は日進月歩です。中体連、高体連と協力して、最新の練習法を普及させたいと思っています。
卓球する子は勉強も伸びる
☆:生涯スポーツとしての卓球の魅力、優れた部分は?
近藤:卓球は<駆け引き>と<予測>の勝負。相手の表情、動きを見てコース、回転を読んで〝待ってました〟と打ちに行く醍醐味でしょう。構えて、打って、ボールを拾ってワンプレー約15秒。この短い時間で判断し、気持ちをリセットしなければならない高速の頭脳ゲームです。卓球をやると学校の成績も上がります。親御さんにはこれを強調しておきたいですね(笑)。 そして、卓球の楽しみは、勝ち負け以上に人との出会いです。友達をつくり、良いところを見て真似をする。私は卓球を通じて多くの人に出会い、人生を豊かにしてもらいました。
《略歴》
1942年愛知県生まれ。名古屋電気工業高(現・愛工大名電高)卓球部、日産自動車で活躍。高校卓球部の指導者をめざし法政大に学び、教員資格を得て白鵬女子高校(旧京浜女子商)を41年間指導。全日本女子チーム監督、北京五輪女子代表監督、JOCエリートアカデミー女子監督などを歴任。現在は実業団日本リーグ女子・サンリツの総監督を務める。
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